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behavior


6月にアントニオ・ロペス展を訪ねた。
心地よく、とてもたのしい作品展だった。
感動でも、感銘でも、感嘆でもなく、ただただ、たのしい展示だった。

どうしてそんな風に感じたのか。
こんな風に記すと誤解を招くのかもしれないが、それは多分、ロペスが「作品」をつくろうとしていないからではなかろうか。

恐らく、ロペスはただ単純に、目の前のすがたを描くのがおもしろくて仕方が無いのではないか。
目の前の対象を発見し、驚き、興奮する、その一瞬一瞬を、たとえそれが困難で不可能なことであっても、画面に落とし込んでゆく。それが単純におもしろく、楽しいのだろう。
少しでも自分の感じているすがたに近づけていく行為、その試みがたまらないのだろう。

細い線で描かれた建築現場の足場。
通りの向いのビルに落ちた看板の影。
タッチの中に穿たれた対象物の座標と目盛り。

それらを、限られた時間の間に少しずつ、画面の上でなぞりながらかたちにしてゆく。
そうした単純な衝動と行為の繰り返しが、よろこびと共に顕われているのが、あの画面なのではなかろうか。
私にはそう思えた。

それはジャコメッティのドローイングにも同じことを感じている。
ジャコメッティのモデルを勤めた矢内原伊作によると、彼のドローイングは苦悩と後悔と挑戦の連続で、時には「これは不可能だ!」と絶望につつまれることがしばしばだったという。

にも関わらず、ジャコメッティの仕事は休むこと無く続けられた。それはなぜか。
ジャコメッティは常に描く対象に顕われるかたちとすがたに打ちのめされながらも、その驚きと感動を追求できるよろこびに満たされていたからなのだろう。
私はそう思っている。

だから私は、それが楽しくて仕方がない。





Exhibition of Kiborio VS Fuka


昨日の仕事帰りに、高瀬きぼりおとふーかさんの、3日間だけの展示を訪ねた。
今回、高瀬きぼりおは珍しく、自画像のみを出していた。
その顔のほとんどは、額から上の、頭の部分が画面から飛び出して隠れている。

「最近あまり考えずに、そのまま描くようにしている」と、高瀬きぼりおは言った。
そうして言葉に顕われた感覚が、知らずと画面の顔から頭を削り取ったのだろうか。
突き抜けた頭の先が画面のまわりとつながり、とけこんでゆく。
けれどもつながる先にある表情は虚ろなような虚ろでないような空気がぽっかりとふくらんでいる。
もしくは切り離された「思考」が、切り離されることで、却って画面の周囲を包み込んでいるのかもしれない。

いずれにしろ、なにかしらざっくりとした潔さを感じる画面だった。
それがおもしろく心地よかった。





高瀬きぼりおの家で


5月の半ばに、私は高瀬きぼりおの家を訪ねた。
彼の絵のモデルをするためだ。

モデルの間、何をしていても構わないと彼は言った。
私はそれを真に受けて、ふるまわれるままにビールとワインを飲み、彼や彼の妻君と面白おかしく話しながらその時間を過ごした。振り返ってみると、一般的なモデルとしては不真面目極まりない。

ところが、高瀬きぼりおは数点の手慣らしの後、瞬く間に私のすがたをキャンバス上に描きあげた。
その画面には私の知らない私がいた。
このように綴るのも少し恥ずかしい感じもあるが、何しろその画面には存分に描き上げたよろこびと同時に、冷たく澄んだ空気の中に「私」の「某か」が映しとられていた。

私はモデルとして映しとられながら、彼らと色々な話をした。
描くこと、対象とのこと、記号のこと。

高瀬きぼりおは言葉と哲学を考える。

妻君のしまやみさこは文字のすがたを考える。
しまやみさこはグラフィックデザイナーで、紙と文字とイラストレーションを、とても美しくデザインする。

ふたりは別々の感じ方をしているようでありながら、同じ事柄について考えているのかもしれない。
同じ事柄について考えているようで、関わり方は異なる。
異なるようで近い。それがおもしろい。

その時の会話は随分長い時間になったのだが、なにかの形にできればと考えている。
気長に。



Takase Kiborio
http://www.kiborio.com/


Shimaya Misako
http://www.misakoshimaya.com/

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